
2025年2月における主要な日本のロボアドバイザーの運用成績を分析した結果、市場の変動とそれに対する各社の戦略が明らかになりました。
SBI AIラップは月間-2.02%のパフォーマンスとなりましたものの、運用開始以来では+39.61%の成長を示しています1。
FOLIO ROBOPROは、2月下旬からの米国株式の下落と円高の影響を受け、1月29日の投資配分変更から3月10日までの下落幅は3.74%に抑制されました2。
一方、THEOのポートフォリオは、グロースが円建てで-3.26%となりましたのに対し、インカムとインフレヘッジは米ドル建てではプラスとなりましたが、円高により円建てではマイナスとなりました3。
これらの運用成績とポートフォリオの動きからは、米国株式に対する慎重な見方、新興国株式への相対的な期待、そして市場の不確実性に備える姿勢が示唆されます。
主要ロボアドバイザーの2025年2月期運用成績分析
SBI AIラップ
SBI AIラップは、2025年2月に-2.02%の月間パフォーマンスを記録しました1。
SBI AIラップは、SBI証券と、AIを活用した運用商品の開発実績があるFOLIOが共同開発したサービスです。
本サービスは、「投資一任契約」に基づき、FOLIOが投資判断を(AIを活用した運用方針を採用)行います。
SBI証券は、お客さまとFOLIOの「投資一任契約」の代理およびお客さまのSBIラップ口座の管理(投資信託の売買注文の執行を含む)を行います。
2022年4月7日の運用開始から2025年2月28日までの期間では、+39.61%の運用実績を上げています1。
直近のパフォーマンスを見ても、3ヶ月で+4.78%、6ヶ月で+11.33%、1年で+17.48%と、中長期では堅調な推移を示しています1。
2月のリバランスでは、米国株式、先進国株式、米国不動産の保有比率を減らし、新興国株式と米国債券の保有比率を増やしました1。
この背景には、2月における円高・ドル安の影響で、全ての投資対象ファンドが円建てで下落したことがあります1。
しかし、新興国株式や金を比較的多く保有していたことが、一般的なロボアドバイザーと比較して下落幅を抑制する要因となりました1。
FOLIO ROBOPRO
FOLIO ROBOPROは、2025年2月下旬から短期間で米国株式が下落し、円高・ドル安が進展する市場環境下で運用されました2。
3月10日までの騰落率を見ると、SOX指数は-17.03%、S&P500(配当込み)は-8.53%となっています(いずれも現地通貨建て)2。
米国の軟調な経済指標の発表により利下げが意識され、米国金利は低下傾向にある一方、日銀は今後も緩やかに利上げを継続すると見込まれており、日米金利差が縮小して円高・ドル安が進んでいます2。
このような状況下で、ROBOPROは2月の投資配分を変更した1月29日を基準とした3月10日までの下落幅を3.74%に抑えることができました2。
2月と3月において、ROBOPROでは米国株式の保有を比較的抑え、新興国株式と金の保有比率が高かったです2。
投資対象資産は円建てで全資産が下落しましたが、特に米国株式の-12.36%が目立つ一方で、金は-0.71%、新興国株式は-3.43%と比較的安定した値動きを示しました2。
THEO
THEOの2025年2月マンスリーレポートによると、グロース・ポートフォリオは米ドルベースで-0.31%、円ベースでは-3.26%となりました3。
THEOグリーン(グロース・ポートフォリオ)も同様に、米ドルベースで-0.15%、円ベースで-3.10%となっています3。
対照的に、インカム・ポートフォリオは米ドルベースで+2.27%とプラスでありましたが、円ベースでは-0.75%となりました3。
インフレヘッジ・ポートフォリオも米ドルベースで+2.21%のプラスに対し、円ベースでは-0.81%となっています3。
ロボアドバイザーの戦略から読み解く市場予測
SBI AIラップ
SBI AIラップが2025年2月のリバランスで米国債券の保有比率を増やしたことは、米国市場の先行きに対する慎重な見方を示唆しています1。
米国の経済指標には弱さが見られ始めており2、トランプ政権の関税政策に対する不透明感も市場の懸念材料となっています2。
安全資産とされる米国債券へのシフトは、このような市場の不確実性に備える意図があると考えられます。
一方、新興国株式の保有比率を高めたことは、先進国株式と比較して新興国市場の成長性に期待していることの表れであろう1。
FOLIO ROBOPROも新興国株式の保有を比較的多くしており2、THEOも香港株式市場が中国のAI技術への楽観論や追加財政刺激策への期待から大きく上昇したと分析しています3。
これらの動きは、一部の新興国、特にアジア地域における成長機会を見込んでいる可能性を示唆します。
米国株式や先進国株式の保有比率を減らしたことは、これらの市場の短期的なパフォーマンスに対する懸念を示唆します1。
米国の景気減速懸念2や、トランプ政権の貿易政策による影響2が、このような判断の背景にあると考えられます。
FOLIO ROBOPRO
FOLIO ROBOPROが新興国株式の保有を多く維持していることは、この資産クラスに対する強い期待感を示しています2。
2月の市場変動期においても、新興国株式は米国株式と比較して比較的安定した値動きを示しており2、この戦略が奏功していることがうかがえます。
また、金の保有比率が高いことも、市場の不確実性に対するヘッジ戦略として機能していると考えられます2。
THEOのレポートでも、投資家のリスク回避姿勢から金が最高値を更新したと報告されており3、金が不安定な市場環境下での安全資産としての役割を果たしていることが示唆されます。
米国株式の保有を比較的抑えている点は、SBI AIラップと同様に、米国市場の短期的な見通しに対する慎重な姿勢を示しています。
THEO
THEOのグロース・ポートフォリオが円建てで大きく下落したことは、米国および日本株式市場の下落と円高の影響を直接的に受けた結果です3。
これは、成長志向のポートフォリオが市場の変動と為替レートの影響を受けやすいことを示しています。
インカムおよびインフレヘッジ・ポートフォリオが米ドル建てではプラスとなりましたものの、円高によって円建てではマイナスとなった事実は、海外投資における為替変動リスクの重要性を示しています3。
米ドル建ての資産に投資する場合、円高が進むと円換算後のリターンが減少する可能性があります。
THEOが香港株式市場の上昇を指摘していることは、一部の新興国市場に対するポジティブな見方を示唆しており、SBI AIラップやFOLIO ROBOPROの戦略とも一致します。
外部経済要因がロボアドバイザーの戦略とパフォーマンスに与える影響
米国経済指標への懸念
2025年2月には、米国の購買担当者景気指数(PMI)や小売売上高が市場予想を下回るなど、景気減速への懸念が強まりました2。
消費者信頼感指数も低下しており10、これらの経済指標の弱さが、SBI AIラップとFOLIO ROBOPROが米国株式に対して慎重な姿勢を取る要因の一つになったと考えられます。
景気減速の懸念は、米国連邦準備制度理事会(FRB)による利下げ観測を高め2、これがSBI AIラップによる米国債券の保有比率増加の背景にある可能性があります。
一般的に、金利が低下すると債券価格は上昇する傾向があります。
トランプ政権の貿易政策への懸念
トランプ政権が再び関税政策を強化する可能性に対する懸念は、市場の不透明感を増大させています2。
THEOは、この警戒感が米国株式市場の下落の一因になったと明示的に述べています3。
貿易摩擦の激化は、世界経済の成長を鈍化させる可能性があり11、これがロボアドバイザー各社がリスク資産へのエクスポージャーを調整する理由の一つと考えられます。
新興国株式への選好は、場合によっては、米国中心の貿易政策の影響を比較的受けにくいと見なされているためかもしれません。
為替変動の影響
2025年2月には、円が米ドルに対して大きく上昇しました1。
これは、米国のインフレ率が落ち着き長期金利の上昇が一服したことや、日銀が利上げを決定したことなどにより、日米金利差が縮小したことが要因として挙げられます2。
この円高は、米国資産に投資している日本の投資家にとって、円換算後のリターンを押し下げる要因となりました。
THEOのインカムおよびインフレヘッジ・ポートフォリオが米ドル建てではプラスでありったにもかかわらず、円建てではマイナスとなったのは、この為替変動の直接的な影響です。
欧州および香港市場の動向
THEOは、欧州株式市場が経済見通しの改善やウクライナ停戦交渉への期待から上昇したと報告しています3。
これは、米国市場とは異なる地域ごとの市場センチメントの差を示唆しています。
一方、香港株式市場は、中国のAI技術に対する楽観論と追加財政刺激策への期待から大幅に上昇しており3、「DeepSeekショック」と呼ばれる中国発のAI技術の進展が、香港市場のテック株を中心に買いを集めました18。
この香港市場の活況は、SBI AIラップやFOLIO ROBOPROが新興国株式に注目する理由の一つと考えられます。
市場予測の比較分析
コンセンサス
分析の結果、3社のロボアドバイザーの戦略からは、短期的には米国株式に対して慎重な見方が共通して示唆されています。
これは、米国経済の減速懸念やトランプ政権の貿易政策に対する不確実性が主な要因と考えられるからです。
また、新興国株式、特にアジア地域(香港)に対して相対的にポジティブな見方も共通しており、成長の潜在力やテクノロジーの進展が期待されているようです。
さらに、市場の変動リスクに備えるため、米国債券や金といった比較的安全な資産への関心が高まっていることも示唆されます。
相違点
一方で、各社が特定の資産クラスにどの程度重点を置いているかには差異が見られます。
例えば、SBI AIラップとFOLIO ROBOPROはともに新興国株式への配分を増やしていますが、その割合やポートフォリオ全体における位置づけは異なる可能性があります。
また、THEOはグロース、インカム、インフレヘッジといった異なる運用目標を持つポートフォリオを提供しており、それぞれのポートフォリオのパフォーマンスと構成から示唆される市場予測は多岐にわたります。
結論
2025年2月における日本の主要なロボアドバイザーの運用成績と戦略を分析した結果、いくつかの重要な市場予測が浮かび上がりました。
第一に、米国株式市場の短期的な見通しについては、経済の減速懸念や貿易政策の不確実性から、慎重な姿勢が示されています。
第二に、新興国株式、特にアジア市場には成長の期待が寄せられており、テクノロジー分野の進展などがその背景にあると考えられます。
第三に、市場の変動リスクに備えるため、安全資産である米国債券や金への注目が高まっています。
最後に、海外投資においては、為替レートの変動がリターンに大きな影響を与えるため、その管理が重要であることが改めて示されました。
投資家は、これらのロボアドバイザーの戦略を参考にしつつも、自身の投資目標やリスク許容度に合わせて、ポートフォリオの分散化を検討することが望ましいです。
また、世界経済や政治情勢の不確実性が高まっている現状においては、市場の動向を注意深く見守る必要があります。
ロボアドバイザーの戦略は、過去のデータやアルゴリズムに基づいており、将来の市場動向を完全に予測できるわけではないことを理解しておくことも重要です。
表1:ロボアドバイザーの2025年2月期運用成績概要
|
ロボアドバイザー名 |
報告期間 |
円建てパフォーマンス (%) |
米ドル建てパフォーマンス (%) |
主なパフォーマンス要因 |
|
SBI AIラップ |
2025年2月 |
-2.02 |
N/A |
|
|
FOLIO ROBOPRO |
1月29日~3月10日 |
-3.74 |
N/A |
|
|
THEO - グロースポートフォリオ |
2025年2月 |
-3.26 |
-0.31 |
|
|
THEO - インカムポートフォリオ |
2025年2月 |
-0.75 |
+2.27 |
米ドル建てではプラスも円高によりマイナス |
|
THEO - インフレヘッジポートフォリオ |
2025年2月 |
-0.81 |
+2.21 |
米ドル建てではプラスも円高によりマイナス |
表2:示唆される市場予測の比較
|
市場セグメント |
SBI AIラップ |
FOLIO ROBOPRO |
THEO |
コンセンサス |
|
米国株式 |
短期的に慎重 |
短期的に慎重 |
関税政策により下落の可能性 |
はい |
|
先進国株式(米国除く) |
ネガティブ |
N/A |
欧州株は上昇 |
いいえ |
|
新興国株式 |
ポジティブ |
ポジティブ |
特に香港株はAI技術への期待からポジティブ |
はい |
|
米国債券 |
ポジティブ(安全資産) |
N/A |
金利低下により恩恵 |
いいえ |
|
金 |
N/A |
ポジティブ(ヘッジ) |
リスク回避姿勢から上昇 |
いいえ |
|
円/米ドル為替レート |
円高方向 |
円高方向 |
はい |
引用文献
- SBIラップ AI投資コース 2025年2月の実績 - SBI証券, 3月 20, 2025にアクセス、 https://go.sbisec.co.jp/prd/swrap/aiwrap_report/post/1Ec8pHwkHjqAIcvNFvP9iq.html
- 株安の中でも慌てない ROBOPROを活用して長期的な資産運用を ..., 3月 20, 2025にアクセス、 https://ai.folio-sec.com/column/article/robopro-202503-fluctuation
- 【2025年2月】おまかせ資産運用THEO[テオ]マンスリーレポート ..., 3月 20, 2025にアクセス、 https://note.theo.blue/n/n7d9758ccbc61
- マーケットニュース - SMBC日興証券, 3月 20, 2025にアクセス、 https://www.smbcnikko.co.jp/market/news/
- 先月のマーケットの振り返り(2025年2月) - 三井住友DSアセットマネジメント, 3月 20, 2025にアクセス、 https://www.smd-am.co.jp/market/lastweek/monthly/2025/month250304gl/
- 2月の米小売売上高は前月比0.2%増と市場予想下回り、消費先行きに不透明感高まる(米国), 3月 20, 2025にアクセス、 https://www.jetro.go.jp/biznews/2025/03/f57a7b52a35eb2b4.html
- 米国経済マンスリー:2025年2月 ~ノイズを見極める~ | 前田 和馬, 3月 20, 2025にアクセス、 https://www.dlri.co.jp/report/macro/420299.html
- 2025年2月のマーケットを ザックリご紹介 - 日興アセットマネジメント, 3月 20, 2025にアクセス、 https://www.nikkoam.com/files/market/longterm1/monthly-market.pdf
- 2025年2月10日号 - SMBC信託銀行, 3月 20, 2025にアクセス、 https://www.smbctb.co.jp/rates_reports/pdf/weekly.html
- 【米国】消費者信頼感指数、2月は98.3に低下 期待指数は景気後退の兆候とされる80を下回る, 3月 20, 2025にアクセス、 https://media.monex.co.jp/articles/-/26491
- トランプ関税の米国経済への悪影響に注目が集まる:25%の関税の応酬で米国のGDPは1.8%、日本のGDPは0.9%低下, 3月 20, 2025にアクセス、 https://www.nri.com/jp/media/column/kiuchi/20250319.html
- 世界・日本経済の展望|2025年2月 トランプ政権の政策に揺れる世界 - 三菱総合研究所, 3月 20, 2025にアクセス、 https://www.mri.co.jp/knowledge/insight/ecooutlook/2025/20250218.html
- 各種報道、トランプ米政権のもたらす経済的不確実性の増大懸念(米国) | ビジネス短信 - ジェトロ, 3月 20, 2025にアクセス、 https://www.jetro.go.jp/biznews/2025/03/caacbbdf1708a6d6.html
- トランプ米政権の追加関税がカナダのエネルギー政策に影響、世論調査 - ジェトロ, 3月 20, 2025にアクセス、 https://www.jetro.go.jp/biznews/2025/02/bdec55d4e82495d3.html
- トランプ政権による「相互+VAT」関税が日本経済に与える影響と金融政策への示唆 | 大和総研, 3月 20, 2025にアクセス、 https://www.dir.co.jp/report/research/economics/japan/20250311_024967.html
- グローバル株式市場動向(2025年2月)-国・地域によりまちまちな展開 | ニッセイ基礎研究所, 3月 20, 2025にアクセス、 https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=81307?site=nli
- アジア株 総じて上昇、香港株は大幅反発 - 2025年02月12日18:29|為替ニュース, 3月 20, 2025にアクセス、 https://fx.minkabu.jp/news/324510
- 中国テック株主導で香港株が急上昇、北京での会合を経て高まる期待感 - マネクリ, 3月 20, 2025にアクセス、 https://media.monex.co.jp/articles/-/26528
- 逆DeepSeekショックで上昇する香港株市場~「素晴らしい10銘柄」はその地位を獲得できるか?~(土信田雅之) - トウシル, 3月 20, 2025にアクセス、 https://media.rakuten-sec.net/articles/-/47989
- ROBOPRO 2025年2月の投資配分(1月29日変更実施)>新興国株式、金と新たに組み入れた米国債券の3資産を中心に据え, 3月 20, 2025にアクセス、 https://ai.folio-sec.com/rebalance-report/202502
いかがしたか。
今回は、私が資産を実際に運用しているロボアドバイザーのそれぞれのレポートを比較してみました。
SBIラップは、FOLIO社と共同開発してFOLIOが投資判断して運用しているわけですから似たような運用になるのは想定していましたが、それでもROBOPROとは多少ズラして運用していることが分かります。
1本化したほうがラクなのですが、取り崩すタイミングでは含み益の違いから税率が変わってオトクな取り崩しができるので、そのまま運用を継続していく方針です。
またこの他にもWealthNaviも運用しているのですが、同社は月次レポートという形のコラムがなかったので割愛しています。
本日の記事参考になれば幸いです。
