
投資ブログを運営していると、たまに「インデックス投資って、もう語り尽くされてるよね」なんて声を聞くことがあります。
正直、その気持ちもわかります。私自身、S&P500や全世界株式に積立を続けてきて、リターンも安定している。
けれど、ある日ふと気づいたんです。「……面白くない」と。
毎月淡々と積み立てて、基準価額が少しずつ上がっていくのを確認して、また来月へ。
この“変わらなさ”が投資の正解なのかもしれない。
でも心のどこかで、「もっと自分で“納得して”選んだ投資もしてみたい」と思っていたのかもしれません。
そんな気持ちの変化の中で出会ったのが、ティー・ロウ・プライス社の『S&P500 PRO』でした。
1. なぜ今、S&P500 PROなのか?
1-1. 王道のインデックス投資に感じていた“物足りなさ”
これまで私は、王道の「S&P500」「オルカン(全世界株式)」といったファンドをベースに、投資初心者から中級者へと少しずつ経験を積んできました。
情報収集は必要だけど、再現性が高く、ほったらかしでも成果が出る。
まさに「時間を味方につける投資」でした。
でも、インデックス投資って――良くも悪くも“全部入り”なんですよね。
市場の平均点をそのまま買う。
しかし、その中には優良企業もあれば、業績の振るわない企業も含まれている。
「玉石混交のままパックで持つ」ことに、段々と違和感を覚えるようになっていったんです。
1-2. 私の中でアクティブファンドの見方が変わった
そんなタイミングで出会ったのが、ROBOPROファンドやアライアンス・バーンスタイン(AB)、WCMのネクスト・ジェネレーション、インベスコの世界のベストなど、“AIやプロの視点”で運用されているアクティブファンドたちでした。
最初は「アクティブ=高コスト・低リターン」のイメージがありました。
でも実際に保有してみると、下落時のスピードは一緒でも、戻りの力強さが違うと感じることが多かったんです。
特に印象的だったのは、「このファンドは“誰がどんな視点で組んでいるのか”が明確」だということ。
営業のための見せかけのファンドではなく、運用者の哲学やリサーチ力が見える商品には、ちゃんと意味がある。
そこで見直したのが、アクティブとパッシブの“中間”にある戦略。
つまり、「S&P500の銘柄をベースにしながら、選び直す」という考え方でした。
2. S&P500 PROとは? ── その仕組みと特徴
2-1. ティー・ロウ・プライス社の運用実績
「S&P500 PRO」の運用会社であるティー・ロウ・プライス(T. Rowe Price)社は、
1937年創業の米国資産運用会社で、世界の機関投資家に長年支持されてきた実績あるプレイヤーです。
特にこのS&P500 PROに相当する戦略は、実に25年以上前から機関投資家向けに提供されており、日本に上陸したのは2025年6月ですが、すでに長いトラックレコードと資産規模を誇っています。
注目すべきは、2000社以上の企業をカバーするアナリスト陣による、徹底した調査・リサーチ体制です。
これは単なる「指数に連動させる」パッシブ型とは違い、“銘柄の中身”を見たうえで判断・ウエイト調整を行う、実質アクティブに近い構造を可能にしている要因のひとつと言えるでしょう。
2-2. 「指数を使いながら、超える」設計思想
S&P500 PROは名前の通り、S&P500指数をベースに構築されています。
しかし中身は「インデックス連動型ファンド」とは似て非なるものです。
具体的には、指数をそのままなぞるのではなく、ファンダメンタル分析などに基づいて、銘柄の構成比率を調整しています。
たとえば:
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業績や収益性が際立っている企業にはウエイトを増やす
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リスクや割高感のある銘柄は比率を下げる
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成長性の兆しがある小型株にも柔軟にアプローチする
── こうした動きが可能なのは、“半パッシブ・半アクティブ”のエンハンスト戦略だからこそ。
これはいわば、「選び抜かれたS&P500」。
市場の“平均点”を狙うのではなく、“平均を超える”ことを目指す運用です。
完全なアクティブファンドのように銘柄を大きく入れ替えるのではなく、あくまでS&P500の範囲内で、比率の最適化という職人技が光る――それが、S&P500 PROの根幹にある設計思想です。
3. 他のS&P500系ファンドと何が違う?
S&P500に連動するファンドは、今や山ほどあります。
なかでも「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」や「SBI・V・S&P500」は、信託報酬0.1%未満という低コストで大人気。投資信託ランキングでも常に上位に位置する鉄板商品です。
一方で、今回紹介している「S&P500 PRO」の信託報酬は0.6105%(税込)。
この数字だけを見ると、「高すぎる」と感じる方もいるかもしれません。
でも──ちょっと立ち止まって考えてみたんです。
「このコストは、何に使われているのか?」
中身で見れば「むしろ割安」な理由
S&P500 PROは、S&P500指数をベースに構成されているものの、単なる“連動”ではなく、“選定と調整”が加わったファンドです。
その裏側には、ティー・ロウ・プライス社の約2000社を網羅する企業リサーチ体制があり、S&P500に含まれる企業群に対して、人の目による分析と評価をもとにウエイトを調整しています。
つまり、
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完全パッシブ:指数に従うだけ
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完全アクティブ:銘柄を一から自由に選ぶ
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S&P500 PRO:銘柄はS&P500から選定し、比率を柔軟に調整
この“中間”に位置する設計=エンハンスト戦略によって、パッシブの安心感を保ちながらも、「指数を上回る可能性」を秘めているのです。
このアプローチにこそ、信託報酬0.6105%というコストの“納得感”があると感じました。
数字では測れない、ファンドの「哲学と覚悟」
このファンドの真価が現れたのは、2020年のコロナショックのときでした。
世界中のマーケットが大暴落し、誰もが様子見をしていたような緊張の最中――
S&P500 PROの運用責任者は、チームにこう告げたそうです。
「今、買える銘柄を3つ挙げてくれ。責任は私が取る。」
このとき、彼らが運用していたエンハンスト・インデックス戦略の資産総額は、約13兆円(960億ドル)。
その巨額の資産を預かる責任は、言葉では語り尽くせない重みです。
それでも、状況判断を他人任せにせず、“今、この瞬間に自分たちで意思決定する”という姿勢を貫いた。
その話を聞いたとき、「これはただのインデックス+αではない」と、私は確信しました。
単なるアルゴリズムや自動調整では出せない、人間の覚悟と判断力。
それが、このファンドの根底に流れていると感じたのです。
SlimやSBI・Vを否定するつもりはまったくありません。
むしろ、投資を始める上では理想的な第一歩です。
でも、「コスト最優先」から一歩進みたいとき。
“より深く選び抜かれたS&P500”に、自分のお金を託したいと感じたとき。
S&P500 PROは、私にとって大きな選択肢となったのです。
4. 実際に積立してみて感じたこと
2025年6月、私はS&P500 PROの積立を始めました。
まだ運用を始めて日が浅く、現時点でパフォーマンスに大きな差が出ているわけではありません。
ただ、だからこそ、「今すぐ成果が出なくても信じて積み立てられるかどうか」が、自分にとって重要な判断基準になると感じています。
4-1. 100円からでも始められる「PRO」体験
このファンドの魅力は、なんといっても100円から積立ができること。
大口投資家だけでなく、私のような一般個人でもアクセスしやすく、すぐに“実践”に移せる点は大きな魅力です。
実際に申込から約定、分配金コースの設定まですべてがスムーズで、投資初心者でもストレスなく始められる設計になっていると感じました。
加えて、設定から1ヶ月あまりで基準価額はすでに最高値(10,839円)を更新。
もちろんこれはマーケット全体の流れもありますが、「指数をなぞるだけではない運用」の存在感を、早くも感じるきっかけとなりました。
なお、現時点(2025年7月)では、楽天証券でのみ購入可能という点は留意が必要です。
他のネット証券や金融機関では取り扱いがないため、これから始める方は楽天証券の口座が前提になります。
その一方で、NISAの成長投資枠でも積立可能というのは非常にありがたいポイント。
税制優遇を受けながら、中長期でじっくり育てていくのに向いていると感じました。
4-2. 少しずつ「主軸」へ── 時間をかけて信頼を積み上げる
S&P500 PROは、短期的に成果を求めるファンドではありません。
動画の中でも、こう語られていました。
「購入後すぐにはパフォーマンスに差は出ない。けれど長期で持ち続けることで、指数を上回る可能性がある」
私はこれを聞いて、“育てるような感覚”でこのファンドと付き合っていこうと決めました。
最初は「S&P500系のサブポジション」という位置づけでしたが、将来的にはポートフォリオの“主軸の一つ”として据えたいと思っています。
インデックス運用の安心感と、ティー・ロウ・プライス社の哲学に裏打ちされた分析力。
この2つが融合したS&P500 PROは、ただ保有するだけでも、自分の投資スタンスに芯が通るような気がしています。
5. 「平均を買う」から「選ばれた平均を持つ」投資へ
投資を始めた頃は、誰しも「とりあえずインデックスから」という段階を通ると思います。
私も例外ではありませんでした。
その後、アライアンス・バーンスタインやWCMなどのアクティブファンドにも触れる中で、投資への視野が広がってきたと感じています。
そして今回出会ったS&P500 PROは、そんな私の“中間点”のような存在でした。
5-1. 投資の次ステージは“中身を見る”こと
信託報酬だけでファンドを選ぶ時代は、もう終わっている。
そう感じ始めたのは、アクティブファンドを取り入れ始めてからでした。
たしかに、S&P500というと「インデックス=低コストで機械的に買う」ものが多いです。
でもS&P500 PROは、“選び抜かれた平均”を目指すエンハンストインデックス型。
インデックスのように幅広く分散しながらも、人的なリサーチや判断を加え、長期的に指数を上回ることを狙う設計です。
これまでのような「完全に任せきる受け身の投資」から、一歩踏み込んだ“選んで託す”投資へ──その切り替えに、私は自然と抵抗を感じなくなっていました。
信託報酬は「コスト」ではなく、「何に対して払っているか」を考える時代。
そんな視点で投資信託を見るようになった今、S&P500 PROのようなファンドは、むしろ納得できる選択肢だと感じています。
5-2. 迷っている人へのひとこと
「投資に飽きた」── そんなふうに感じるとき、ありますよね。
でも、それは飽きたのではなく、“次の選び方”を模索しているだけなのかもしれません。
投資には“進化の段階”がある。
今の自分に合う選び方が、過去と同じとは限らない。
私はS&P500 PROを通じて、
「中身を見る楽しさ」「任せる相手を選ぶ責任」を実感しながら投資に向き合えるようになりました。
S&P500という“王道”に、もう一段深く踏み込む選択肢──
それが、私にとってのS&P500 PROです。
